走る前に頭の中を空にしておきたい

陸上(長距離)・博士課程での研究について。

長期的視野

昨日、母親が食後に軽い蕁麻疹を発症した。

もともとアレルギー体質だが、本人曰く「お茶のカフェインに反応したのではないか」ということである。調べてみると本当にそのようなアレルギーが存在するようだ。

それはさておき、アレルギー反応というのは即時的な現象に見える。アレルゲン(アレルギーを引き起こすきっかけとなる食物やチリ、ホコリなど)を身体に取り込むと、わりかし早くその反応が出ることが多い。

ところが、アレルギー体質というものは短期的に出来上がるものではない。遺伝的側面もあるかもしれないが、幼少期からの生育環境や、口に入れてきたものによって、時間をかけて出来上がるものである。

したがって、アレルギー物質を身体に取り込むという行為はアレルギー反応の引き金でしかなく、本当の原因は長期的に培われたアレルギー体質にあると考えられる。

 

長距離ランナーの故障の多くはいわゆる使い過ぎ症候群である。コンタクトスポーツと異なり、突発的な事故による故障はあまり多くない(捻挫くらいだろうか)。

したがって、今朝目が覚めると脚が急に痛くなっていて、どうやらこれは故障らしい、という場合において、その原因が昨日の練習だけにあるということはほとんどない。あるいは、走っている間にいきなり脚が痛くなったとしても、その練習は脚が痛くなったきっかけに過ぎず、原因はそこまでのダメージの蓄積にある。疲労骨折の場合を考えるとわかりやすいだろう。

したがって、故障を防ぐには、普段から練習量や強度の調節を綿密に行っていく必要がある。

合宿へ行くと突然一杯走れた、けれど帰ってきたら怪我した、というのはよくある話。

合宿といういつもと異なる環境に置かれることでハイになってしまい、いつもより調子が良いように錯覚してしまい、いつもより練習量を極端に増やしてしまう。ハイになっていると、1週間や2週間は意外と問題なく乗り切れてしまうのだが、その後になってツケがまわってくる。

 

練習効果を考える上でも、この長期的視野というのは大事になってくる。何故なら、人間の体は外からの刺激に適応するまでには時間がかかるからだ。 

人間の身体の細胞が一新されるまで3ヶ月かかるという話を聞いたことがある。その信憑性は不明だが、少なくとも今日の練習によって1週間後2週間後にパフォーマンスが大きく高まっているということはあまりないような気がしている。

 なので、速くなるために自分なりに何かしら新しい取り組みを試そうというとき、それによって身体の状態やパフォーマンスに(自覚できるほどの)変化が生じるまでには、自分が思っている以上の時間がかかることは知っておくべきだ。

 

物事が長続きしない原因の多くは、「成果が努力に見合っていないと感じる」からだ。

たとえば、貯金の例を考えてみよう。毎月、うまくやりくりして決まった額を貯金に回す。すると、口座総額は貯金期間に比例して増加していくだろう。

つまり、貯金では、コツコツ頑張ることがそっくり成果として表れる。

ところが、競技力の場合にはそうはいかない。初心者ならほどほどに練習しているだけでも急激に伸びることはあるだろうけど、途中で成長速度が極端に下がることもある。一方で、コツコツと頑張っているのに伸び悩んでしまう場合もある。

下図にイメージ図を書いてみたけど、競技力の向上に関する成長曲線はもっと多様なものになりうるはずだ。

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(利子は考えません)

ここで言いたいことは、図の黄色の直線のように、「頑張っていたけど長い間伸び悩んだ。でもあるところで急成長を遂げた」というケースが少なからずあるということだ。そういうブレイクスルーが起こる手前の段階で、「頑張っているのに全然成果が出ない。もうやめよう」と投げ出してしまうことは大変もったいない。

もちろん、取り組み始めたことが効果を上げない可能性もある、ただ、それを判断するには、最低でも3か月、できれば半年は続けてみる必要があると思う。