問題を見つける
何かを改善したい場合、行うべきは
- 現状を分析し、本質的な問題は何かを考える
- 問題の原因の究明
- 原因に対する対処の模索
の3つだ。
ここでの「何か」とは、ざっくりとした事柄でいい。
本質的な問題は何か考える
例として、「故障しやすい」ということを考えてみよう。
まずするべきは現状分析だ。
一口に「故障しやすいと言ってもいろいろなケースがある。片脚だけに集中して痛めるのか、内側と外側のどちらが多いか、部位は偏っているか。外傷と障害(オーバーユース)も分けて考えるべきだ。
これまでの競技生活を振り返って、これまでに受傷した怪我をすべてリストアップしてみよう。
次に、これらの怪我に至るまでの過程を整理する。どんな練習をしていたか、どんな気候だったか、どのような日常生活を送っていたか、どのような精神状態だったか。
ここまで書き出したら、今度は怪我どうしに共通点や因果関係がないか探す。近い部位を傷めることや、他の部位の故障をかばって傷めるということはよくある。
すると、ある程度の規則性、あるいは特徴が見えてくる。
ここまでの作業から、「問題」を可能な限り列挙する。
そのあと、問題一つ一つに対して「これは本質的な問題か?」と問いかける。
「本質的な問題であるか」を判断するには、その問題が解決すると状況はどのように変わるかを予想し、それが現状と比較してどの程度のインパクトがあるかを考えればよい。
時間とエネルギーには限りがあるから、この段階で向かい合う課題を徹底的に絞っておくことが重要となる。
自ら問題を見つけることの重要性
...とまあ、ここまで細かくいろいろ書いてきたけれど、最終的にたどり着く「本質的な問題」は、最初のざっくりとした問題が同じならたいてい同じ場合が多い。
例えば、
故障が多い
- 肩甲骨・背骨・骨盤・股関節という身体の根幹が固まり切っている(筋肉どうしが硬直している)ために骨どうしが滑らかに動くことを阻害し、不自然な部位に負荷がかかっている
- オーバートレーニング(回復可能な水準以上で負荷をかけている)や偏った練習形態(特定の部位に過負荷が生じている)
- 回復が不十分である
持久力が低い
- 心肺機能や筋機能が開発され切っていない
- 上記のような固まった体ではランニングエコノミーが低く疲れやすい
など。
どんな故障をしていて、それらがどう関連していて、どのように引き起こされた場合であっても、故障とは特定の部位に回復可能な水準以上の負荷がかかることで引き起こされるので、過負荷が生じるような状況を改善するか、回復力を上げることにたどり着く。
ランニングパフォーマンスについては基本的に「酸素を取り込んでエネルギーをどれだけつくることができるか」「作り出したエネルギーをいかに効率よく使うか」のどちらかに帰結する。
精神力がどうこう、という意見もあるかもしれないけど、それはまた別の問題だと思う。
では、同じ問題に帰結するのになぜ過去を洗い出してあれこれ考えて自分で問題を見つけなければならないのか。
それは、人から教えられただけでは理解が伴わないからだ。
自分で「こういう怪我をして、こういう経緯があって、自分はこういう体の特徴があって、...、ということはこれを改善させれば故障を減らせるはずだ!」という思考プロセスを経る場合と、
治療院へ行って「(いろいろ診療した結果)君の体は○○という特徴があって△△という故障につながる。だからこれを改善させれば故障を減らせる」といわれる場合では、
その問題を改善するための物事への向き合い方が大きく変わる。
自分の頭で考えているからだ。
治療院へ行って経験ある人の意見を聞くことや、本やインターネットで情報を集めることは大事だ。
後で書くけれど、「何をするか」を考える上では情報が不可欠になる。
けれど、この後の「行動」の動機づけにおいては、これらの「情報」より、情報を活用しつつどう「思考」したかの方が重要となる。
目の前の問題を実際に解決するためには、何をすべきかを明らかにするだけでは不十分で、実際に行動する、継続するための意志がなければならない。
自分で見つけた問題に取り組むとき、その主体性とモチベーションは与えられた問題に取り組む場合に比べて桁違いだ。
だから、自分で見つけた方がいい。
ここでの「見つける」とはdiscover(まだ誰も知らない新事実を発見すること)ではなく、find(他の人は知っているかもしれないが自分は知らなかったことを発見する、気づく)の意味で使っていることに注意されたい。
↑参考図書。ランニングとはあまり関係ないけど、いかに思考するか、どのように問題を見つけ、対処していくかを学べる良書。僕自身いろいろ考えて取り組んできたつもりだけど、まだまだ学ぶべきことが山のようにあると感じました。
続きは次回。