走る前に頭の中を空にしておきたい

陸上(長距離)・博士課程での研究について。

行動しよう。

実業家の植松努さんによる、「思うは招く」という名スピーチがある。

植松さんは事業の傍ら、子供の頃からの夢であったロケット開発に専心されている方だ。

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「思うは招く」というのは、決して「思っているだけで叶う」という意味ではない。

植松さんは、一度は忘れてしまっていた子どもの頃の夢をかなえるため、社会人としてそれまでやってきたこととは全く異なる方向へと歩を進めた。

行動が伴って初めて、何かが叶うかもしれないのだ。

 

ところで、この動画に対する両親の反応は、

「植松さんの言っていることは『引き寄せの法則』と同じだね」

というものであった。

引き寄せの法則」というのは、「物事は思った通りに展開される」という、いわゆるスピリチュアル界隈では有名な考え方である。

正直、この反応に対して不快感を覚えてしまった。

 

次に、なぜ不快に思ったのかを考えてみた。

一定数の人を引き付けている「スピリチュアル」というものが、僕にとっては「宗教」にしか見えないということが大きな理由だと思った。

特に、物理を学び、研究している者としては、そうした人たちが物理に現れる「量子」や「波動」といった概念を都合よく切り貼りし、支離滅裂な展開で無知な人を丸め込もうとする姿勢が不愉快なんだと思う。

彼らはそれが正しいと思って一生懸命発信して、聞いている人達も正しいと思って一生懸命聞いているのだから、そうしたあり方は別に否定はしない。

ただ、これは間違いなく「宗教」だと思う。

 

では、どうして「宗教」にしか見えないものと、植松さんの話とを一緒くたにされることに不快感を覚えたのだろうか。

それは、「宗教」には、具体的な行動が欠如しているからだと思った。

神に祈って戦争がなくなるなら苦労しない。

マインドセットが変わるだけでは現実は変わらない。

行動が変わって初めて、現実が好転するのだ。

ブッダもキリストも、多くの弟子たちに教えを説いたかもしれない。その教えが、のちに宗教として形づくられたのかもしれない。

ただ、決して忘れてはならないのは、彼らは哲学者であり、徹底的な「行動主義者」なのである。

彼らは彼ら自身の問題について、彼らの頭で考えて実際に行動してきた。彼らの話は、自身の問題に向き合う中で彼らが考えたことの結晶である。

だから、彼らの話をただなぞっているだけでは何も変わらない。これが「宗教」だと思う。

自分の人生で生じている問題に適用し、彼らの経験をうまく役に立てつつ、最終的には自分の行動を変えていく。そのような向き合い方の方が、はるかに有用であると思う。

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僕は競技者として、(記録の面では)大学の4年間でそれなりに成長した方だと思う。もっと急成長した人はいくらでもいるけれど、うまくいかなくて高校時代の記録を超えられないという人もたくさんいた。

成長できたのは運や環境のおかげでもあるけれど、自分の頭で考え、試行錯誤しながら行動し続けてきたことが一番の要因だと思う。

一方で、僕はリーダーとしてはほとんどうまくいかなかったと思っている。

チーフとして、個々の部員の能力を高めるためのアプローチがうまくいかなかった。

僕は、一人ひとりの意識を引き上げることが大事だと考えていた。定期的に個人面談をしていろいろと話をしてみたり、集合でみんなの心を動かせるような話をするようあれこれ工夫していた(おかげで、一部の後輩から入信したいと言われた)。

これによって意識が変わり、部員の行動が自発的に変われば、自然と結果もついてくると思った。

でも、このアプローチはうまくいかなかった。人の価値観や考え方は長い時間かけて、周りの人の影響を受けながら形成されていくものだから、ちょっとやそっと外から働きかけた程度では変わるものではない。

 

むしろ、行動が変わるためのアプローチを行うべきだったのかもしれない。

そもそも、「やろうという意識はあるけど行動につながらない」という人は少なからずいただろうし、意識が大きく変わらずとも行動が変われば結果がついてくる可能性は上がる。行動が習慣化することでむしろ意識が変わるということもあるだろう。そのような発想にたどり着くだけの想像力が足りなかった。

では、行動を変えるにはどうするのがいいだろうか。

手っ取り早いのは「システムをつくる」ことだ。

具体的に言えば、ルールをつくることや、環境を整えるということだ。

例えば、毎朝走るということをしようと決めた場合。

一緒に練習する人がいれば、時間を決めて集合する。

いなければ、仲間に「これから走ります」と連絡し、終わったら「走りました」と一報を入れる。

もし守れなければ何らかのペナルティを課す。

これは実業家・Youtuberのマコなり社長のやり方を引用してきたもので、「自分との約束は破りやすいが、人との約束を破るのは抵抗がある」という人間心理をうまく利用したものである。

ほかにも、勉強に集中するために、スマホの電源を切り、自習室やカフェなど雑念の少ない場所へ行く、というようなやり方もあるだろう。これは環境を整えることで行動を変える一例だ。

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現実を変えたければ、行動しよう。

なかなか行動できないという人は、行動するための仕組みを作ってみよう。